山田和樹と日本フィルによるマーラーのシンフォニー・ツィクルスもいよいよ最終回となりました。いつものオーチャードホールへ聴きに行きました。
ツィクルス全曲は聴くことが出来ませんでしたが、第6番以降の4曲を聴けたのは良かったです。出来ればあと2番「復活」、5番が聴けていればベストでした。
もっとも「大地の歌」が今回のツィクルスには含まれませんでした。『全曲』と銘打つのに含まれないのは不思議なところですが、一般の”交響曲全集”には「大地の歌」が含まれないほうが多いので仕方ないところです。
マーラーの第9番は恐らく自分が最も好きなシンフォニー。以前はブルックナーの第9番だったのですが、最近はむしろマーラーに惹かれます。
ただ、これまでマーラーの9番を実演で聴いたのは小林研一郎/日フィルとパーヴォ・ヤルヴィ/フランクフルト放送響ぐらいです。
あとは自分が大学を卒業した直後に複数の大学オケによるジョイントコンサートへヴィオラで参加したこともありました。
さて、例によって武満作品が前プロに置かれましたが、曲は「弦楽のためのレクイエム」でした。前プロには正にピッタリです。
マーラーの第9番には作曲者自身のそれほど遠くないうちに訪れるであろう”死の予感”が間違いなく反映されています。第1楽章が”死への恐れ”ならば、第2楽章、第3楽章は”生との格闘”、そしてついに第4楽章では”永遠の世界への旅立ち”というように聞き取れます。
最後に”人間の生”全てが浄化されて終わるようなこの曲には、ちょっと他に類例が無いような強烈な魅力を感じます。
今日の演奏もとても良い演奏でした。山田和樹の指揮は幾らか速めのテンポで推進力があり、弦楽器を目いっぱい弾かせてその上に管楽器と打楽器をバシッっと乗せます。そのバランス造りは終始徹底していました。ですので全体がとても引き締まっていて迫力に不足しません。音楽が実に分かりやすいです。
ただ、それが余りにスッキリと見通しが良いので、マーラー特有のネチネチ、ドロドロとした雰囲気が少なく感じられるのは仕方ありません。そういうところは先輩のコバケンのほうが得意とするところです。
そういった個人の好みは有るにせよ、オーケストラにとってマーラーのツィクルスほど面白いものは無いので、いずれまた何年か先に山田さんの指揮がどのように進化しているのか聴きいてみたいものだと思います。
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マーラー 交響曲第9番 名盤