ロシアの名門マリインスキー劇場からテノールのカルロス・ドノフリオとバリトンのミハイル・ガヴリーロフの二人の歌手と専属ピアニストのエカテリーナ・ヴェンチコヴァが来日して、「ロシアより愛の調べ、愛の詩」コンサートツアーがロシア文化フェスティヴァルの公式プログラムとして開催されました。
ツアーは9月16日の八ヶ岳高原音楽堂公演を皮切りに10月5日の日経ホール公演まで公開演奏会が全6公演、非公開を加えると全部で7公演が行われました。
このコンサートツアーのホスト役となったのはかつてマリインスキー劇場に在籍し、現在は日本で多彩な活動をされているソプラノ歌手の中村初恵さんです。ワレリー・ゲルギエフとともに名門劇場を支えるゲルギエフの姉ラリッサ・ゲルギエワからの信頼も厚く、ラリッサさんが今回のツアーの後ろ盾となってくれたことでこの素晴らしいツアーが実現しました。
それにしてもマリインスキーの男性歌手の実力は圧倒的で、どの曲でもその深々とした声でロシアの歌をじっくりと聴かせてくれました。対照的に中村初恵さんは清らかで澄んだ声質を持ち、ロシアの歌の抒情性や美しい魅力をたっぷりと味合わせてくれました。
今回の7公演のうちの3公演では日本在住の名チェリスト、ドミトリー・フェイギンさん、そしてフェイギンさんの叔父の名ヴァイオリニスト、グリゴリー・フェイギンさんに師事した日本人の優れた若手ヴァイオリニスト小野唯さんがゲストとして参加しました。
もちろん歌手だけでも最上のパフォーマンスが可能なのですが、あえて日本で活躍するロシアゆかりの演奏家が彼らと共演することで、日本とロシアの友好イベントとしての価値が更に高まったと思います。これは単なる営利目的の事業では無く、国際文化交流事業なのですから。
歌を支えるピアノの妙技。さらにヴァイオリン、チェロが加わってのピアノトリオの演奏、伴奏の素晴らしさ。このツアーでは聴きどころが山ほどありました。
私はたまたま中村さんの活動を以前から応援していたことから、このツアーのサポートをさせて頂ける幸運に恵まれ、横浜みなとみらいホール公演、日経ホール公演、ロシア大使館での公演に携わりました。
それにしても、これだけの大規模のプロジェクトがマネージメント会社の運営によるものでは無く、幾ら社団法人とはいえ業務に慣れていないスタッフによる手造りコンサートツアーとして運営されたことは奇跡に近いです。
皆さんにこの素晴らしい公演をお聴き頂きたかったですし、それも出来ることなら一つだけでなく構成の異なる別公演も聴いて頂きたかったです。
それがかなわなかった方へ、せめてツアーの写真をご紹介させて頂きます。
初回公演の前夜、宿泊先の八ヶ岳高原ロッジで出演者とスタッフの夕食風景(9/15)
ロシア大使館で開かれたディナーパーティ付きコンサート(9/27)
バリトンのミハイル・ガブリーロフと中村初恵さんのデュオ(9/27)
ピアノトリオの伴奏による素晴らしい歌のハーモ二―(9/27)
本番前のリハーサル。ラフマニノフのピアノトリオ第1番「悲しみの三重奏曲」(9/29)
終演後のロビーでもお客様に温かく迎えられました(10/5)
このほかにも群馬、埼玉で公演が行われました。
そして多忙な彼らは最終公演の翌朝、成田空港行きのバスに乗り東京を離れました。
3週間を超える来日ツアーを行ってくれた彼ら、その準備に1年をかけて運営してくれた中村初恵さんとハートフルアートの事務局長さん。それを陰で支えた大勢のサポーターたち。その結果、かくも素晴らしき日本とロシアの友好コンサートツアーが大成功に終わりました!