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ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮ロンドン・フィルのブラームス交響曲全集

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ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(1989-91年録音/EMI盤) 

前回マタチッチのベートーヴェン全集を取り上げたところで、そういえば同じようにN響を指揮して我が国に馴染みの深いサヴァリッシュのブラームス交響曲全集を購入したままだったのを思い出しました。サヴァリッシュはブラームスの全集を1960年代初めにウイーン交響楽団とフィリップスに録音していましたが、こちらはそれからおよそ30年後となる二度目の録音です。 

まず、第1番から聴いてみると、ゆったりとしたテンポでスケールが大きく堂々たる演奏なのに驚きです。名前を聞かなければサヴァリッシュとは思わないでしょう。インテンポをかたくなに守りますが、端々でリズムの念押し、音のタメを効かせていて、真正ドイツ的で重厚なスタイルと言えます。2、3楽章の慈しみ深さ、終楽章のじわりじわりと高まる感興の深さも実に素晴らしいです。 

第2番も同様にゆったりとしたテンポで心からペルチャッハの自然を慈しむような演奏です。終楽章ではテンポを速めて勢いよく演奏する指揮者も多いですが、サヴァリッシュはここでも必要以上に煽らずにじわりじわりと高揚させていきます。金管を抑えてドイツの楽団のような厚みのある柔らかな響きを醸し出しているのは見事です。 

第3番も、やはりゆったり気味かほぼ中庸のテンポで、速くは無いです。1楽章は良い演奏ですが、ドイツの楽団に比べると僅かに響きの厚みに欠ける気がします。2、3楽章は落ち着いていて地味ですが美しく、さほど不満は有りません。終楽章に入ると俄然気迫が込められて、一気に聴き応えが増しますが、ドイツ的な堅牢なリズム感を失わないのは良いです。

第4番は1楽章冒頭のHの音を長く躊躇いがちに開始し、そのあともロマンティックさをかなり押し出しているのには驚きます。金打楽器を抑えることも無く、強い気迫を感じさせます。2楽章は静かに歩みますが、いつしか思いのたけをぶちまける様に歌わせて心を打たれます。3楽章も堂々たる構えですが、白眉は終楽章で、まるで実演の様に激しくうねります。サヴァリッシュ渾身の指揮ぶりに圧倒されます。

 全4曲とも録音は中々に良いです。EMIによる録音なので、余り明晰過ぎずに響きをほの暗く捉えているのでブラームスには向いています。ロンドン・フィルの音は部分部分では音が薄く感じられることが無いわけではありませんが、総じてサヴァリッシュに応えて熱演しています。

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他の指揮者のブラームス交響曲全集に関してはこちらより
ブラームス 交響曲全集 名盤 ~古典派の肉体にロマン派の魂~

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