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Channel: ハルくんの音楽日記
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創作オペラ 「ザ・ラストクイーン」 世界初演

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新国立劇場でオペラ「ザ・ラストクイーン」を観劇しました。新作オペラで、今日が世界初演でしたが、僕は昼夜二回公演の昼の公演を観たので、本当の世界初演に立ち会えたことになります。

このオペラについては先に紹介記事を書きました。

そして今日、公演を観ての感想は『感動的だった』の一言に尽きます。

日本の皇族として生まれて、昭和天皇のお妃候補とも噂された梨本宮方子(まさこ)は、日本の王公族となった旧大韓帝国の元皇太子・李垠(いうん/イ・ギン)と1920年(大正9年)に結婚します。政略結婚でありながらも、波乱の歴史の中で二人はお互いに尊敬し、愛し合い、日本と朝鮮の架け橋としての責務を果たしてゆきました。

戦後、夫の死後も韓国に留まり、障害を持つ子供達の支援の為に力を尽くし、民間人として日本と韓国の友好に一生をささげました。その激動の人生は何度もドラマや小説になりましたが、オペラ化は今回が初めてなのです。

李方子妃を演じるのは、在日韓国人二世のプリマドンナ・田月仙(チョン・ウォルソン)ですが、彼女は李方子妃の実像に迫るために自身で日韓で取材を続けてきて、近年発見された方子直筆の日記や手紙、写真などの資料を元に台本を練り上げたそうです。創作責任者として、このオペラにかける思いが並々ならぬものであることが分ります。

事実、このオペラのソリストは一人、李方子妃を演じるチョン・ウォルソンのみというモノ・オペラ形式を取ります。というのも台本は李方子の心の内を歌で表現することに100%費やされているからです。夫の皇太子さえもバレエダンサーが舞で演ずるという斬新さに驚かされました。ソリスト以外は4人の声楽家が場面場面の人物に扮してソロやコーラスとして歌います。

演出は秀逸で、当時の映像を効果的に背景に流し、そこにナレーションを加えることにより、物語の展開を非常に分かり易くしています。最小の小道具と光を使った舞台は必要かつ充分だったと思います。

音楽は西洋音楽に日韓のリズムを取り入れたオリジナル新作です。作・編曲者の孫 東勲は非常にセンスの良いアレンジを施して、ピアノ、フルート、ヴァイオリン、チェロ、打楽器の僅か5人のアンサンブルで見事に音楽表現をさせていました。ただし音楽に伝統的なアリアスタイルを期待すると失望するかもしれません。音楽に魅力的なメロディラインが登場するわけでは無いからです。

このオペラを創作してほぼ一人で1時間半の長丁場を途中休憩なしで歌い演じきったチョン・ウォルソンが圧巻でした。ラストには「たとえ声が枯れようとも」と絶唱を聞かせて、李方子妃が人生を全うして倒れる姿と重なり合い、本人の魂が乗り移ったのでは無いかと思えるほどでした。いや、確かに乗り移っていたと思います。

このオペラは日本寄りでも韓国寄りでも無く、事実を忠実に描いており、だからこそ感動させられ、日本と韓国の友好を心から願いたくなるのだと思います。


アイルランド音楽コンサート ~ギネスビールを片手に~

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世田谷のコミュニティ”シェア奥沢”で「アイルランド音楽コンサート ~ギネスビールを片手に~」を開きました。

演奏をしてくれたのは、小松大さん(フィドル)、田中千尋さん(ボタン・アコーディオン)、田中麻里さん(アイリッシュハープ、バウロンなど)の三人です。

一言で”アイルランド音楽”と言っても様々です。古くから日本に伝わった抒情的な音楽も有れば、あの映画「タイタニック」の船底のシーンに描かれた、歌い踊り大騒ぎする音楽も有ります。しかし、アイリッシュパブで演奏されるダンス音楽というのは、やはり代表的なカテゴリーです。

昨日はそのアイリッシュパブをシェア奥沢で再現しようと試みました。といっても前半は、じっくりと耳を傾けて聴いてもらうコンサート形式。後半はギネス・ビールを飲みながらパブ・スタイルで。

軽妙さが楽しいダンス音楽ですが、その中にそこはかとなく漂う情緒がやはりアイリッシュ音楽の特徴なのですね。それが田中麻里さんがハープをソロでそれは美しく奏でたり、「ダニーボーイ」「庭の千草」などの抒情的な曲が演奏されると、もう情緒一杯に成ります。「う~ん、アイリッシュ!」

三人の皆さんの演奏は本当に素晴らしかったですね。ソロで弾いても素晴らしいですが、日頃セッションで鍛えられた合奏の実力は流石です。

この日聴きに来られた方たちは、アイリッシュ音楽を生で初めて聴いた方が多かったと思いますが、皆さん大変満足されていた様子でした。

演奏の三人をお招きしたきっかけは、僕が今年習い始めたフィドルのお師匠さんが小松さんだったからなのですが、昨日は師匠の演奏に改めて感激しました。「ダニーボーイ」の哀しみの演奏、いやー泣けた!

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クラシック名曲鑑賞会第5回「カフェで聴くウイーンの音楽」

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丹沢の山並みの麓にある厚木市森の里の街は緑に覆われています。

先週の土曜日、そのコミュニティサロン”森の里ふらっとコアラ”で、クラシック名曲鑑賞会第5回「カフェで聴くウイーンの音楽」を開催しました。

ウイーンの街にゆかりの深いモーツァルトとヨハン・シュトラウスの名曲を本場ウイーンの演奏家のCDで参加者の皆さんと楽しみました。

緑に包まれた森の里で聴く「ウイーンの森の物語」はピッタリの印象でした!

長岡満雄氏に毎回ご提供頂いている自作スピーカーは日々進化を遂げていて、音の純度の高さと生々しさは前回以上となっています。
あのコンパクトなサイズから再現される音は正に信じ難いのですが、今回も初めて参加された方から驚きの声が上がっていました。

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次回、第6回目の開催は11月22日(日)14:00から本厚木駅近くの”ぎゃらりー喫茶なよたけ”で開催を予定します。詳しい内容については追ってお知らせします。

伊藤悠貴チェロリサイタル 「チェロ名曲欧州ロマン紀行」

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昨日は伊藤悠貴さんのチェロリサイタルを聴きに行きました。「チェロ名曲欧州ロマン紀行」と題した内容で、ヨーロッパ各国の作曲家の小品をずらりと並べていました。

と、それならば秋に相応しいセンスの良い企画だなぁと普通に思うのですが、どっこいプログラムには、ブラームスやマーラーの歌曲のチェロ&ピアノ編曲版が何曲か含まれていました。これは楽しい!

ですが、僕が一番面白く感じたのは、あのワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」前奏曲の編曲版です。これは伊藤さんの友人による編曲で、恐らく日本ではこれが二度目(伊藤君が以前にも一度弾いている)の演奏では無いかということです。

チェロとピアノが技巧を駆使して繰り広げる愛と悲劇のトリスタンの世界。いやぁ、凄いものを聴いてしまいました。こんな曲は普通のチェリストが弾いてもサマにはならないのでしょうが、あの若さでヨーロッパで活躍し、音楽の本場に流れるロマン派気質を天性として持っている伊藤さんが演奏したからこそ面白かったのでしょう。

もっとも伊藤さんは「演奏家」としてのスケールの大きさだけでなく、「国際人」として「人間」として素晴らしく大きな器を持っています。彼は将来きっと日本の音楽界全体をリードしてゆくことだろうなぁと確信をしています。

1週間後の11月7日には、大井町駅前のきゅりあん大ホールで大友直人指揮東京交響楽団との共演が予定されています。曲目が僕の溺愛するドヴォルザークのチェロ協奏曲です。これはもう本当に楽しみでワクワクしています。

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ハンヌ・リントゥ指揮フィンランド放送響 日本公演

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今年はフィンランドの生んだ大作曲家ヤン・シベリウスの生誕150年記念の年なので、我が国でもシベリウスの曲のコンサートが盛んに開かれています。

特に嬉しいのは来日する機会が決して多いとは言えないフィンランドの名門オーケストラがやって来ることです。

昨夜はフィンランド放送交響楽団のコンサートを聴きに、トリフォニ―ホールへ足を運びました。

この団体はフィンランドの優れたオーケストラの一つですが、エッサ・ペッカ・サラステ時代に録音されたシベリウスの交響曲全集は自分の愛聴盤です。

今回初めて聴く指揮者のハンヌ・リントゥはフィンランド出身ですので、やっぱり、あの偉大なヨルマ・パヌラの門下生です。パヌラ教授は数えきれないほど優れた指揮者をフィンランドから生み出していますが、名指揮者でも有る御本人の演奏が中々聴けないのがちょっと残念です。

昨夜のプログラムは以下の通りでした。

  交響詩「タピオラ」作品112
  交響曲第7番ハ長調作品105
        (休憩)
  交響曲第5番変ホ長調作品82

後期の傑作を並べた涎物の構成ですね。どちらかと言えば前半、後半を逆に聴いてゆきたい気もしますが、コンサートの構成としてはやはりこうなるのでしょう。

さて、リントゥの指揮は本当にオーソドックスで安心して聴いていられます。奇をてらったところが一切なく、これでこそシベリウスの音楽を堪能できるという感じ。これはパヌラ門下に共通して言えることですね。

フィンランド放送交響楽団の音もそれは素晴らしく、ネイティヴのオーケストラ以外からは聴けない本物のスオミの音。派手さ奢侈さが全く見られずにとても地味なのですが、深い森と湖から聞こえてくるような仄暗く、しかし手ごたえの有る美しい響きです。

おかげで遠く足を伸ばした甲斐が有る、素晴らしい時を過ごすことが出来ました。

今月末にはもうひとつフィンランドの名門ラハティ交響楽団が来日します。しかも率いるのがあのオッコ・カムとくれば、またまた聴き逃せません。

クラシック名曲鑑賞会第6回「秋にはやっぱりブラームス」のご案内

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秋は夕暮。うら寂しく、人を恋しく思うころ、ひとり窓より外を眺め、ブラームスの調べなど聴きたるは、いとをかし。

暑かった夏もいつしか過ぎ去り、気がつけばすっかり秋が深まりました。こんな季節には、センチメンタルで美しいメロディがいっぱいのブラームスの音楽が最高です。上の写真は珍しいブラームスの写真ですが、深まる秋に窓の外を眺め、自作のメロディを頭に浮かべては物想いにふけっていたことでしょう。

秋の午後のひと時、クラシック鑑賞歴45年の司会役が厳選したブラームスの名曲・名演奏をご一緒に楽しみましょう。

今回も、スピーカー研究家長岡満雄氏製作の高音質スピーカーにてオーディオ再生を行います。ご期待ください。

開催日時:2015年11月22日(日)14:00~16:00
場所:ぎゃらりー喫茶なよたけ
参加費:¥100(他にドリンクを1点注文して頂きます
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          <プログラム>
交響曲第3番第3楽章(映画「さようならをもう一度」テーマ曲)
弦楽六重奏曲第1番より(映画「恋人たち」テーマ曲)
チェロ・ソナタ第1番ホ短調作品38
「ハンガリア舞曲集」(ヴァイオリンとピアノによる二重奏版)より
ピアノのための「3つの間奏曲」作品117
        ※司会と進行役は私です。

          <お問い合わせ>
クラシック名曲を楽しむ会  TEL 090-6009-7213 

ぎゃらりー喫茶 なよたけ  TEL 046-222-8887
厚木市中町1-6-1 セントラルハイツ2F(本厚木駅東口より徒歩5分)(イオン隣)

東京交響楽団演奏会 指揮 大友直人、チェロ独奏 伊藤悠貴

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今日は大井町のきゅりあん大ホールへ東京交響楽団のコンサートを聴きに行きました。

『スラブの旋律』と副題が付けられていて、ドヴォルザークのチェロ協奏曲とチャイコフスキーの交響曲第5番の2曲プログラムです。

指揮は大友直人、チェロ独奏が伊藤悠貴です。聴きに行ったお目当ては伊藤さんのチェロなのですが、大友さんのサポートであればまず安心です。

このホールへは初めて来ましたが、チューニング段階で残響が少ないことに気付き、やや不安を憶えます。というのもヴァイオリンやピアノと違って、チェロは音域の点からどうしても音が聞きにくい場合が多いからです。

などと思いながらも、ドヴォルザークの演奏が始まりました。東響はいつもながら良くまとまった音を出しています。長い序奏が終わり、いよいよ伊藤さんのチェロが音を出しましたが、中々良く響いています。この残響の少ないホールでこの曲をこれだけ聞かせるのは凄いことです。

伊藤さんは幾つもの国際コンクールで優勝しただけあって、テクニックは非常に優秀ですし、ハイポジションの伸びのある高音も実に素晴らしいです。

けれども最大の魅力は、極めてロマン的な歌心だと思っています。絶妙なルバートと拍の伸び縮み、音のダイナミクスの変化が実に自然に行われています。なので違和感が全く感じられません。このセンスの良さは名演奏家にとって不可欠な絶対条件なのです。20代の若さでこのように感じられる演奏家は非常に稀だと思います。若くしてビッグネームとなった演奏家でも(少なくとも自分には)そう感じられない演奏家がとても多いからです。

今日の東響のコンマスはグレブ・ニキティンで、この人は演奏する姿がキリっとしていて格好良いですが、第三楽章の独奏チェロとの二人の掛け合いも実に美しく素晴らしかったです。

大友さんの指揮は実に手堅く、伊藤さんの独奏を実に上手くサポートしていました。実力ある若手に華を持たせるあの余裕ぶりはさすがです。

海外オケが演奏しても生では意外に満足できないドヴォ・コンに、今日は非常に満足出来る演奏を聴くことが出来ました。

後半のチャイコフスキーも大変まとまりの良い演奏でした。ただ、生で数えきれないほど聴いている曲の為に、もう少し良い意味で”クセ”と”個性”が出ていた方が楽しめたかな。
むしろアンコールのグリーグ「ホルベルの時代から」のプレリュードのほうが愉しめました。
大編成の弦楽にしては、とても爽やかさが感じられた美しい演奏には感心しました。

この演奏会は品川文化振興事業団の主催でしたので、地元のコンサートに地元のお客さんが集まっている、という印象でした。なので、クラシックのコンサートにはそれほど行かなそうなお客さんが多かったように見受けられました。

それでも隣に座っていた70歳ぐらいのご婦人同士が、聴き終えた後に「やっぱりオーケストラはいいわねぇ」と喜んでいたのが実に微笑ましかったです。

地元でコンサートが有れば、地元の人が聴きに来る。それこそが文化振興です。自分の住んでいる厚木市にも立派なコンサートホールが有りますが、プロのオーケストラの演奏会なんて数年に一度有るかないかという状態です。クラシックばかりが良い音楽だという気は毛頭も有りませんが、プロの本格的なオーケストラが聞けない街だというのは嘆かわしいとしか言いようが有りません。

素晴らしい演奏に感動をした後に、何やら複雑な思いではありました。

オッコ・カム/ラハティ交響楽団 2015来日公演 ~感動のシベリウス~

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フィンランドの生んだ大作曲家シベリウスの音楽は大好きですが、その魅力を開眼させてくれたのは30年以上前にヘルシンキ・フィルを率いて来日したオッコ・カムの演奏でした。

そのカムが、やはりフィンランドの名門ラハティ響とと来日したのでオペラシティに聴きに行きました。仕事の都合で平日は厳しいのですが、週末に後期の交響曲第5番、6番、7番を演奏してくれたのは幸いです。

さて、開場前にホールに向かうエスカレーターを登ろうとすると、カメラを持ってパチパチ写真を撮りながらフラフラしている外人のオジサンがいました。うん?カムに似ているなぁーと思いながら、声をかけました。

「あなた音楽家?(実際は英語で)」「イエス」
「あなたコンダクター?」「イエス」
「カムさんでしょ。偉大な指揮者のあなたの昔からの大ファンです。30年前のあなたとヘルシンキ・フィルの演奏には感動しました。」「憶えていないな。」
「今日の演奏会を楽しみにしています。握手してください。」「OK。」
と、まぁだいたいそんな短い会話をすると、カムさんまたパチパチ写真を撮りながら行ってしまいました。開演直前にリラックスしたものだと感心。...

開場してホールに入り席に着き、いよいよ演奏が始まりました。さすがにカムさん舞台では真面目な顔をしています。前半は第5番です。いやこれは素晴らしいシベリウスでした!ラハティ響はヴァンスカ時代に鍛え上げられて優れたオケなのは分かっていましたが、それを自然体ながら非常に豊かな音楽を聞かせています。カムはオケを厳しく統率するタイプでは無く、ある程度自主性に任せるおおらかさを感じますが、弦楽の表情づけなどは素晴らしいの一言です。表現はロマンティックながらも、過度にベタベタすることは無く、あくまでも寡黙さを失わない正に北欧音楽。シベリウスに頻出する弦楽のトレモロによる和音の変化はさしずめブルックナー的な面白さを持ちますが、その変化の処理の上手さは絶品で唖然とするほどです。名曲の第5番のこれだけ魅力的な演奏は極めて稀の気がします。前半からブラ―ヴォの嵐でしたね。もうコンサートが終わった位の充実感です。

後半は第6番、7番といよいよシベリウスの深遠な世界に入って行きます。オケの響きは増々充実して美しく豊かになり、一音一音がどこをとっても神秘的な雰囲気に溢れます。ああ、これこそは晩年のシベリウスの世界!

5番に比べて地味に終わる曲が続き、さらにアンコールも穏やかな曲が続いたので、これは最後は「フィンランディア」だな、と確信がありました。で、アンコール3曲目となり、やはり出ましたフィンランディアが!
ただただ感動して聴き惚れていました。あの中間部の有名な旋律が木管で奏されたあとに続く弦楽が非常な弱音で弾かれたのには背筋がゾクゾクしました。普通はここは合唱入りの版に勝るものは無いと思ってはいますが、こんな演奏を聴かされるといやぁ管弦楽のみの版もやはり素晴らしい!

演奏終了後の嵐のような拍手に応えて何度も何度も出てきましたが、団員が引き上げても拍手が停まらないので、カムが団員を呼び戻して全員に揃って何回もお辞儀をさせていました。団員達もこの日本の聴衆の喜びようにみな感激しているようでした。

本当に感動的なコンサートでした。音楽的にも雰囲気的にも聴衆と演奏家がこれほど一体感を分かち合える演奏会はそう有るものでは無いと思います。
やっぱりカムさんのシベリウスはかけがえのないものだなぁ。

それにしても今日は完全にSOLD OUT。空席が本当に見当たりませんでした。後期のプログラムでこれだけのお客さんが詰めかけて、しかも本当に見事な聴衆ぶり。
日本のシベリウス・ファンの素晴らしさにもブラーヴォですよ!

終演後にはカムさんが大勢のお客さんのサインに応じていました。

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シェア奥沢クリスマスコンサート

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12日、自由が丘にある古民家のコミュニティ”シェア奥沢”で、中村初恵(初姫)とジェフリー・トランブリーによる Duo Dona Sonus(響の贈り物)、そしてピアニスト ユーリー・コジェヴァートフ によるスペシャルX’masコンサートを開催しました。

初恵さんは日本、ジェフリーさんはアメリカ、ユーリーさんはロシアの出身なので、日米露が揃った正に”世界平和の象徴”のようなメンバー。

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プログラムはドイツとロシアの歌曲、モーツァルトの三大オペラからのハイライト、クリスマスソングと盛りだくさん!

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特にシェア奥沢で初のオペラは初姫とジェフリーが愉快な演技を繰り広げて大喝采でした。

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更にはカッチーニのアヴェマリア(は私に贈ってもらえて感激の涙)に、ユーリーさんの素晴らしいピアノ独奏でラフマニノフ「パガニーニの主題による変奏曲」の有名な部分と、これでもかというぐらいのサービスぶり!

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最後はアンコールの「清しこの夜」「メリーウィドー」でカーテンです!

もちろんコンサートの後は出演メンバーと一緒にテーブルの御馳走を囲んでの交流会。これがシェア奥沢の大きな楽しみです。

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皆さんに心ゆくまで楽しんでもらえたことと思います。

ドイツ・リート・コンサート at シェア奥沢 シューベルト歌曲集「美しき水車小屋の娘」全曲

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昨年から東京自由が丘にある民間コミュニティ”シェア奥沢”で主にクラシックの演奏会を企画させて頂いています。

次回は来年の1月9日(土)にシューベルトの歌曲集「美しき水車小屋の娘」全曲演奏会を開催します。

この歌曲集はシューベルトがドイツの詩人ヴィルヘルム・ミュラーの詩をもとに作曲した全部で20曲から成る作品です。

いわゆるシューベルトの三大歌曲集(他に「冬の旅」「白鳥の歌」)の中で最も抒情性を湛えていて、旅をする青年が美しい娘へ恋をする憧れと熱い思い、そして失恋の哀しみから死に至るまでの物語を余すところなく表現しています。

各曲の旋律の美しさと親しみやすさは比類が無く、いかにも青春の息吹を感じさせるようなロマンティックな甘さを持っているのが大きな特徴です。

かつてはレコードに残されたフリッツ・ヴンダーリッヒやディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウの名唱、この曲集を得意として日本でも何度も歌ったペーター・シュライヤーの歌唱などがファンを大いに魅了しました。

それほど素晴らしい歌曲集なのですが、生で歌われることは意外に多くありません。誰もが知っている名作であることが、逆に若い歌い手にはやや躊躇させるのかもしれません。

その「美しき水車小屋の娘」全曲に新進気鋭のテノール歌手小田知希(おだともき)さんが挑みます。ピアノを演奏するのは合唱や歌曲の伴奏経験の豊富な原好香(はらよしこ)さんです。

この曲集は通常、テノールやバリトンによって歌われますが、”清純な若者の歌”としてはやはりテノールで歌われるのがイメージにピッタリです。

新しい年の初めに、この心を洗われるような美しさのシューベルトの歌曲集をご一緒にじっくりと鑑賞してみませんか。皆様のお越しを心よりお待ちしております。

ドイツ・リート・コンサート at シェア奥沢

開演日時:2016年1月9日(土)16:00

会場:シェア奥沢  住所:東京都世田谷区奥沢2-32-11
               TEL 03-6421-2118

参加費用:¥1500(コンサート)/ ¥500(交流会)

お申し込み&問い合わせ:TEL 090-6009-7213(朝倉)
                 メール rsa54219@nifty.com

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ブラームス 交響曲全集 名盤 クルト・マズア指揮ライプチッヒ・ゲヴァントハウス管

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Brahms_masur253クルト・マズア指揮ライプチッヒ・ゲヴァントハウス管(1977年録音/フィリップス盤)

クルト・マズアが年末に亡くなりましたね。何も亡くなった人を悪く言うこともないのですが、この人は最後まで滅多に感心することの無いマエストロでした。そういう点ではハイティンクと良く似ていて、少なくとも最近では二人ともすっかり巨匠扱い。でも昔から余り感心することが無い。要するに自分の好みとは隔たりの有る指揮者なのでしょうね。

マズアに関しては、まづぁ、出会いの印象が良く無かったのです。大学生の時に期待していったゲヴァントハウス管の来日演奏会。曲目はベートーヴェンの第九。指揮者がこのマズア。

とんでもなく古色蒼然としたオーケストラの音色にすっかり魅了されました。が、が、が、指揮の何と面白く無いこと!オーソドックスと言えば聞こえは良いが、クソ真面目で全然面白くない。四角四面でベートーヴェンの苦悩も歓喜も何も聞こえてこない演奏でした。

なので、すっかりマズアという指揮者が嫌いになり、その後何を聴いても(と言っても嫌いに成ったので余り聴いてはいないのだが)同じように面白みのない演奏でした。

ということで、このブラームスの交響曲全集をこれまで聴かなかったのも指揮がマズアだからという理由だけ。それをどうして今頃聴く気になったのかと問われれば、それは「ゲヴァントハウス管の演奏だから」というのがその答え。

ブラームスの交響曲の演奏をして最高なのは、シュターツカペレ・ドレスデン、ハンブルク北ドイツ放送響、それにライプチッヒ・ゲヴァントハウス管、この3つの楽団だと思っています。ウイーン・フィルも良いには良いのだけれども、密度の濃い重厚な響きを聴こうとすると、ちょっと音が澄み過ぎて薄い感じがしてしまうのです。

さて、そうしてこの交響曲全集の演奏を聴いてみました。うーん、やはりゲヴァントハウスの音は素晴らしいです。コンヴィチュニー時代の質剛健な響きは後退しているものの、そんじょそこらのドイツのオケでは出せない重厚な音をやはり聞かせています。良かったのはマズアが期待以上に健闘していることです。クルト・ザンデルリンクの貫禄には程遠いものの、非常に安心して聴いていられるオーソドックスなブラームスです。ドイツ人の割には重厚さがいま一つですが、時にフラフラするところの有る、ギュンター・ヴァント/北ドイツ放送響の全集よりはずっと良いと思いました。第1番、第2番、第3番とブラームスの音楽をすっかり満喫しました。第4番も良いのですが第3楽章あたりがいかにも覇気の無いマズアまる出しなのでがっかりです。あの重厚なザンデルリンクでもこの楽章ではラプソディックな熱気を充分に感じさせてくれるのと対照的です。

そうは言っても、全体的に中庸か、いくらかゆったりとしたテンポですが、全てにおいてイン・テンポを守っているのでスケール感もそれなりに感じられますし決して悪くありません。何よりもゲヴァントハウスの響きが聞けるのが最大の魅力なので、やはり素晴らしい全集の一つとして数えられます。

クルト・ザンデルリンク/SKドレスデン、オトマール・スウィトナー/SKベルリンに加えてドイツオケによるブラームスのシンフォニー全集ベスト3に入るかもしれません。カラヤン/ベルリン・フィルやクーベリック/バイエルン放送響よりはずっと気に入りました。もっともエッシェンバッハが北ドイツ放送響と新録音を行なってくれたら恐らくそれに抜かれる可能性が有ります。

お知らせ

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広くお知らせは致しませんでしたが、慣習に則りまして年始の祝辞は控えさせて頂きます。皆様にとりまして新しき年がより良き年と成りますよう心からお祈り申し上げます。

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ドイツリート・コンサート at シェア奥沢 ~シューベルティアーデ~

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自由が丘の古民家コミュニティ、シェア奥沢でドイツリート・コンサートを開催しました。正に、かつてシューベルトが友人仲間と個人の邸宅に集まって作品の発表会を行っていた”シューベルティアーデ”の再現となりました。

今回は特別ゲストとして指揮者の清水史広氏をお招きして、プレトークの形で解説をして頂きましたが、これだけでも価値のある面白い内容でした。

メインのコンサートもシューベルトの歌曲集「美しき水車小屋の娘」全曲の生演奏が身近で聴けるという貴重な機会でしたが、テノールの小田知希さんの情熱的な歌はヴィルヘルム・ミュラーの詩による若者が恋する物語を感動的に聞かせてくれましたし、ピアノの原 好香さんは歌にピタリと寄り添って見事なアシストぶりでした。

1年前から温めていたドイツリート・コンサートを実現出来たうえに大変素晴らしい演奏となり、お二人には心から感謝したいと思います。もちろん素晴らしいご協力を頂いた清水先生にも深く感謝します。

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グリゴリ・アルフェーエフ 「マトフェイ受難曲」 日本初演

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昨日は浜離宮朝日ホールへ「マトフェイ受難曲」の日本初演を聴きに行きました。
この曲は英語で「St Matthew Passion, grand oratrio for sloists, choir and orchestra」ですので、「独唱、合唱、オーケストラ(弦楽)のためのオラトリオ”マタイ受難曲”」ということです。

作曲者のグリゴリ・アルフェーエフは、1966年生まれのれっきとしたロシア正教会の司教です。幼少期に音楽を習い、モスクワ音楽院に入学して作曲を習いました。

ところが彼は仕事を音楽では無く、聖職者になる道を選びます。
40歳までは聖職に専念しましたが2006年、たまたま自分の作品がモスクワの正教会音楽祭で演奏をされたのをきっかけに、再び作曲を始めました。その年に書いた三番目の作品がこの「マトフェイ受難曲」です。

初演は翌年2007年にモスクワ音楽院大ホールでフェドセーエフ指揮モスクワ放送響により行われ、大成功に終わりました。ちなみにそのライブはCDにもなっています。

アルフェーエフはこう語りました。
「偉大なるロシア人作曲家ミハイル・グリンカの夢を実現させたと思う。」

その夢とは『西洋音楽のフーガとロシア正教会の歌を融合させること』だったようです。

確かに、実際に曲を聴いてみると、バッハの「ヨハネ受難曲」の第1曲に似たように書かれた曲や厳かな正教会風の合唱の印象が強いです。しかし曲によってはフォーレの「レクイエム」のような繊細な雰囲気を表す曲も現れます。

作品全体は伝統的な作風で書かれていますので、とても聴き易く、現代曲的な難解さは少しも有りません。ソロ楽器によるオブリガートもしばしば登場しますが、どれもとても楽しく書かれています。

全体は通しで約1時間半の演奏時間ですが、全く退屈しませんでした。

指揮者の渡辺 新さんはロシア、北欧、東欧の音楽を得意にしておられ、オーケストラ・ナデジーダ、合唱団ナデジーダを率いてそのような音楽の普及に力を入れられているそうです。よく思いますが、このように明確なコンセプトを持たれた音楽活動というのは本当に貴重だと思います。

演奏のレベルも非常に高く、特に合唱団は人数こそ各パート10人弱ですが、パートごとのパワーバランスが良く、大変美しかったです。弦楽オーケストラもフーガなどパートが独立する部分ではプロのようには行きませんが、合奏ではとても美しかったです。独唱者にはロシア人をはじめ、優れた日本人声楽家が担当していたのでとても良かったです。
初めて耳にするこの作品の良さを充分に感じさせてくれた素晴らしい演奏でした。

この作品はもっと多くの人に聴いて貰いたいと思います。他の団体が取り上げることは中々考えにくいので、この団体で是非とも再演を願いたいと思います。

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終演後に楽屋でソプラノ独唱の中村初恵さんを囲んで

神奈川に「県央音楽家協会」が設立されました

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昨日 2月13日(土)、「県央音楽家協会」の設立を記念して『設立記念パーティ』が本厚木のライブバー”コシーナ”で開催されました。

この組織は、神奈川県の中央エリアで活動をするプロの音楽家の新団体ですが、横浜や川崎に比べて音楽振興の点で遅れをとるこのエリアの音楽の地域創生を目指すことが目的です。

祝杯に続いて内田忠行代表よりご挨拶があり、続いて事務局長に就いた私から今後の活動方針についてご説明をさせて頂きました。私は音楽家ではありませんので裏方です。

説明の合い間にも出席者同士の積極的な意見交換が行われて、充実した集まりになりました。 また、交流会では出席者が順に1曲づつ演奏を披露して大いに盛り上がりました。

私も「My way」を英語で歌わせて貰いましたが、プロのピアニストの伴奏で声楽家たちの前で歌うことになるとは思ってもいませんでした。

リンク
県央音楽家協会ホームページ


千住真理子×仲道郁代 ブラームス:バイオリン・ソナタ全曲コンサート

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ブラームスの書いたバイオリン・ソナタは3曲だけですが、どれも傑作なのでこれらを同時に演奏するとなれば誰の演奏でも聴きに行きたくなります。しかもそれがファンの仲道郁代と千住真理子とあれば尚更です。

その二人のDUOコンサートが銀座のヤマハホールで開かれました。
舞台の上のお二人から話を聞くまでは知らなかったのですが、お二人のDUOコンサートというのは今回が初めてなのだそうです。確かに意外でした。チェロの長谷川陽子を加えたトリオでよく演奏しているからでしょうね。

さて、舞台に登場したお二人は相変わらず素敵でした。今日の席は前から二列目のやや左寄り。お二人を目の当たりに見るのには絶好の位置です。

でも、いくらファンだといっても、それで「演奏が良かった」などと書いては演奏家に失礼というものです。AKBではありません。

今日の演奏の合間のお二人のショート・トークのときに、千住さんが「若い頃、江藤俊哉先生から『この曲はロールスロイスが40kmで走るようなものだ』と聞いたことがありました。」と話していました。

確かにわからない例えではありません。それで言えば今日の演奏は40kmというより60kmぐらいの印象だったでしょうか。特に千住さんの握るハンドルにはやや力が入り過ぎていたような気がします。第1番や第2番の美しい旋律に「いじらしさ」がまだまだ不足しているように感じられました。それはテクニックの問題では無いと思います。それだけ演奏が難しい曲なのですね。
その点、第3番は情熱で押し切れるような曲想なので、60kmで丁度良かったです。リヒテルとオイストラフの録音などは100kmぐらいで少々速度違反に感じるからです。

お二人は「大変なプログラムですが、今日この時の私たちの演奏を聴いて下さい。」とも話していました。今日の演奏の印象は書いた通りですが、10年後にもまた3曲の演奏を聴けるとどんな印象を受けるか楽しみです。

今日は他に「F.A.E.ソナタ」とアンコールで「(ブラームスの)ワルツ」を演奏してくれました。ブラームスファンとしては大満足です。

ルッツ・レスコヴィッツさんのサロン・コンサート

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先週日曜日に聴いたルッツ・レスコヴィッツさんのサロン・コンサートは本当に素晴らしかったです。なにせイエルク・デームスと50年もの間DUOを組んだヴァイオリニストというだけで想像が付こうと言うものですが、実際に目の前で弾かれるルッツ氏のストラッドの音と言ったら圧巻!太くて柔らかくて美しくて・・・。その音は、僕の大好きな古き良きウイーンのヴァイオリニストのバリリやシュナイダーハンのイメージそっくり!ああ、音色も演奏スタイルも、あんな音楽を生演奏で聴くことが出来るだなんて思ってもいませんでした!

長谷川美沙さんのピアノ伴奏との息もピタリでしたが、やはりルッツさんが長年DUOを組んだデームスさんの愛弟子だからなのでしょうね。

夢のように素敵なコンサートを企画してくれたお店のマスター石田さんには大感謝です!

いちよ・たかこ・やぎりんトリオ 出逢いから1周年コンサート in シェア奥沢

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先週日曜日、「いちよ・たかこ・やぎりんトリオ 出逢いから1周年コンサート in シェア奥沢」が開かれました。

昨年の3月、自由が丘の古民家コミュニティ、シェア奥沢での共演が出逢いとなってこの素晴らしいトリオが誕生しました。言ってみれば、シェア奥沢はトリオにとって「聖地」なのです。

あれから1年。その聖地での記念コンサート&パーティに、やぎりんトリオのファンが大勢集り、とってもウォームでアットホームな楽しいひと時となりました。

アイルランド民謡の名曲「思い出のサリーガーデン」では、私もフィドルでゲスト出演させて頂きました。やぎりんがこの曲で吹くアイリッシュホイッスルとフィドルのハーモニーは大変に素朴でひなびた雰囲気を醸し出しました。忘れられない『思い出のオクサワガーデン』となります!

山田和樹指揮日本フィル演奏会 マーラー交響曲第6番

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いまや大活躍の指揮者、山田和樹が2015年から2017年の3年にわたり渋谷のオーチャーホールで日本フィルと演奏するマーラー・チクルス第6回目を聴いて参りました。第1番から順番に演奏しているので、今回は第6番「悲劇的」となります。

山田和樹は私の住む厚木市からほど近い秦野市の出身ですので、やはり応援をしたくなります。地元出身に声援を送るのは相撲や高校野球だけではありませんね。

日フィルを聴くのは久しぶりです。7年前に第九を聴いて以来かもしれません。世代交代が遅れた感のある日フィルは当時は余り優れているとは思えませんでした。それがどう変わっているかも興味深いところです。

マーラーに先立って演奏されたのは武満徹の「ノスタルジア」で、この曲はヴァイオリン独奏と弦楽オーケストラのための15分ほどの作品です。淡々とした静寂に包まれた曲でした。

メインのマーラー第6はとても好きな曲です。しかしこの曲は熱演をすると、ともすると絶叫型の演奏に陥り易く、案外と難しいです。マーラーを得意とするバーンスタインのニューヨーク・フィルとの録音もそうですし、エリアフ・インバルが都響とこの曲を演奏した時にも金管の絶叫がうるさくて閉口した記憶があります。

山田和樹の演奏は基本テンポは速めでしたが、この曲を象徴する冒頭のザッザッザッという低弦の刻みの力強さが印象的です。3列目の席で聴いたので弦楽奏者の気迫、弓を大きく使い、音を割った迫力が生々しく感じられました。日フィルのイメージが変わります。

アルマのテーマの歌わせ方は中々です。個人的には更に大見得を切るような演奏が好きですが、これは悪くありません。中間部の壮絶な迫力は凄いですが、美観を損ねるような騒々しさにまで陥らないのが非常に良いです。この辺は山田和樹のバランス感覚だとしたら流石です。インバルよりも明らかに上です。

この曲は第2楽章と第3楽章でアンダンテ、スケルツォとアダージョが入れ替わる二つの版が存在していて未だに結論は出ていません。マーラー自身が迷っていて結論が出ていなかった為です。しかし今日は第2楽章スケルツォ、第3楽章アンダンテの順で演奏されました。山田和樹のこの見解はOKです。この逆にはどうしても馴染めないからです。

演奏については、第2楽章スケルツォのリズムの切れは良かったですが、第3楽章アンダンテの寂寥感、神秘感はもう一歩というところでした。これは自分の要求が相当高いところにあるからかもしれません。

終楽章は第1楽章と同じことが言えますが、あの長い楽章を乗り切りました。金管が幾らかバテ気味に感じられましたが、全体的に緊張感を最後まで維持して立派な演奏でした。

日フィルのマーラーもコバケン時代とだいぶ変わった印象です。以前は指揮者の要求に実際の音が応え切れない感が有ったのが、今日は山田和樹の棒にかなり応えていました。メンバーの世代交代と技術のレベルアップが着実に実現されていたように感じられました。ただしそれは他の在京オケにも言えることなので、さらに上を目指して欲しいと思います。

今日は色々な意味で聴きに来て良かったコンサートでした。残るは来年の7、8、9番ですが、9番は是非とも聴きたいと思います。

團伊久磨作曲 オペラ「夕鶴」公演

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今日は東京文化会館で團伊久磨のオペラ「夕鶴」を観て参りました。

私の生まれる前に初演されたこの作品は、おそらく日本人が作曲したオペラの中でも最も有名で上演回数も多いと思われます。でも私が観たのは今回が初めてです。

今回は新演出ということで、演出:市川右近、美術:千住博、衣装:森英恵、指揮:源田茂夫といったスタッフ陣でした。主役のつうを歌うのは佐藤しのぶです。

これまでのイメージは、舞台は質素な民家で土間には鍋や釜が置いてあり、登場人物の衣装は古い着物という感じでした。雑誌写真からはそう思っていました。

ところが今回は大きな回り舞台が有るだけで、あとは照明で変化を付けて、雪が時折降り注ぐだけです。極めてシンプルです。衣装は洋服ですし、村の子供たちは何色ものパステルカラーのガウンを着ています。

これが新しい「夕鶴」ということですが、こういう作品には奇をてらった演出よりも、昔話の絵本を見るような演出がやはり好きです。

この作品は、夫が妻つうの機織りをしている部屋を覗いてしまうまでの第1部が95分、つうが鶴の姿となって飛んで去ってしまう第2部が35分と非常にアンバランスな配分です。

音楽的には第1部はほとんど抑揚が無く、旋律も余り無く、淡々としたセリフもどきの歌で進んでゆきます。それで95分はちょっと辛いです。第2部は多少ドラマティックに成るので聴けますが、いかんせん第1部が長過ぎです。こういう音楽を風情のない舞台や衣装で見せられては正直言って楽しめません。

このオペラの台本は同名の戯曲からですが、『妻の隠れた姿を見てはならない』というのは、その逆も言い得て、『夫の隠れた姿を見てはならない』ということになります。つまり「夫婦はお互いに隠れた部分が有り、それを無理に暴けば亀裂が入る」というのがテーマなのではないでしょうか。それは現代にそのまま通じます。

そもそもオペラに仕上げるには、この物語は余りに単純過ぎるのではないでしょうか。古典的な演出の舞台を観たとしても、この音楽で楽しめるとは思えません。イタリアオペラやドイツオペラのあの楽しさはどこにも有りませんでした。それとも観る人が観ればちゃんと面白い作品なのでしょうか?自分には残念ながら理解出来ませんでした。

オーケストラ演奏はシティ・フィルでした。お世辞にも入念な音造りとは言えませんでしたが(はっきり言えばお粗末)、それはオペラピットの演奏には良く有ることですし、自分にはそれ以前の問題が大きいので余り気になりませんでした。

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