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ドヴォルザーク 弦楽四重奏のための「糸杉(Cypresses)」 名盤

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ドヴォルザークは弦楽四重奏曲も多作で全部で14曲を書きました。ボヘミアの爽やかさを感じるような魅力作が並びますが、さすがに最高傑作の「アメリカ」のレベルを期待すると拍子抜けする恐れが有ります。それよりもむしろ僕が惹かれているのは”弦楽四重奏のための「糸杉」”という番号無しの作品です。

ドヴォルザークは青年時代、音楽学校を卒業後、オーケストラのヴィオラ奏者を務めていましたが、その仕事の合間にチェルマーコヴァ家の二人の娘さんの音楽教師となります。そこで姉のヨゼフィーナに恋心を抱くのですが見事に失恋してしまいます。

そこでドヴォルザークは失意のうちに、当時プラハで出版されていたモラフスキーの詩集「糸杉」を題材とした18曲の歌曲集を作曲します。詩の内容は絶望と悲しみに満ちていて、終曲では「この苦しみが自分の故郷となる」という悲痛さの中で終わります。

ところが、彼は後にヨゼフィーナの妹であるアンナと結婚をするわけですから、アントンくんも中々やりますね。どうしてどうして”女性”には案外逞しかったようです。少なくとも生涯独身のブラームス先生を越えています(?)。

当時24歳だったドヴォルザークが書いた歌曲集「糸杉」は、友人の作曲家のカレル・べンドルに献呈されましたが、余り評価をされなかったので、後に改定を加えて「4つの歌 作品2」「愛の歌 作品83」の別の歌曲に編曲しました。

更に歌曲集の作曲から22年後、46歳となったドヴォルザークが弦楽四重奏用に編曲した12曲がこの「糸杉」という作品です。

各曲のタイトルは以下の通りです。

  1. 私は甘い憧れに浸ることを知っている
  2. 死は多くの人の心をとらえる
  3. お前の優しい眼差しに魅せられて
  4. おお、私たちの愛は幸せではない
  5. 私は愛しいお前の手紙に見入って
  6. おお、美しい金の薔薇よ
  7. あの人の家の辺りをさまよい
  8. せせらぎに沿った森で
  9. おお、ただ一人の愛しい人よ
  10.そこに古い岩が立っている
  11.この地にさわやかな西風が吹き
  12.私の歌がなぜ激しいか、お前は尋ねる

どの曲も3分前後の短い曲ですが、元々が歌曲であるだけにどの曲もとても情緒的な美しい旋律を持っています。甘く恋を歌う曲も有れば、悲しみに包まれた曲も有り、ドヴォルザークの才能が既に明確に表れています。

現在では「糸杉」と言えば、むしろ弦楽四重奏版の方が取り上げられることが多いようです。実際にCDも複数出ていますが、原曲の歌曲の方は余り取り上げられていません。

ところで、Cypressの語源ですが、ギリシア神話で美少年キュパリッソが姿を変えられたのが糸杉だとされていることから、この名が付きました。キプロス島の名前もここからとされています。

糸杉はヒノキ科の木で、欧米では街路樹や建築資材に多く使われますが、キリストがはりつけにされた十字架がこの木で作られたという言い伝えがある為に、花言葉は「死」「哀悼」「絶望」であり、死や喪の象徴とされます。
これで歌曲集の意味がよくお解りでしょう。

それではCDのご紹介です。

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プラハ弦楽四重奏団(1973年録音/グラモフォン盤) 
これは彼らのドヴォルザークの弦楽四重奏曲の全集盤に含まれている演奏で、単売されていないのが残念です。けれども演奏は非常に素晴らしく、僕はこの演奏が最も気に入っています。何といっても第1ヴァイオリンのブジェティスラフ・ノヴォトニーの歌い回しが絶品で、この曲の持つ数々の美しい旋律から優しさや愛の悲しみを余すところなく表現し尽くしています。ボヘミアの情緒もこぼれ落ちそうです。

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パノハ弦楽四重奏団(1994年録音/スプラフォン盤)
パノハ四重奏団の演奏も素晴らしいです。彼らも弦楽四重奏の全集盤を完成させていて、その中に含まれますが、単売もされています。ちなみに自分が所有しているのは後期作品を集めた3枚セットです。第1ヴァイオリンのイルジー・パノハに代表されるいかにも”チェコの弦”の特徴である、しなやかで美しい音がどの曲においても楽しめます。愛を失った悲しみに溢れるこの愛すべき曲にふさわしい慈愛に満ちた名演奏だと思います。

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プラハ・ヴラフ弦楽四重奏団(1996年録音/NAXOS盤)
単品で手軽に購入されたい場合にはこちらがお勧め出来ます。廉価盤と侮ることなかれ。本場チェコの団体が行った全曲録音の中の1枚で、彼らはメジャーレーベルの演奏団体と比べて少しも遜色の無い充分な実力を持っています。楽器の音色も綺麗です。彼らの歌い回し、表現そのものは控え目で奥ゆかしさを感じますが、それは目の前の悲しみに”立ち向かう”というよりも”そっと寄り添う”というイメージです。けれどもここぞという場面ではしっかりと悲痛な叫びを上げています。


ルッツ・レスコヴィッツ ヴァイオリン・リサイタル

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昨日は”第37回プリモコンサート”として、オーストリアの巨匠ヴァイオリニスト、ルッツ・レスコヴィッツさんのヴァイオリン・リサイタルが開催されました。ヴァイオリン・リサイタルと言ってもピアノトリオが2曲も演奏される豪華なプログラムです。

デュオを務めるピアニストの長谷川美沙さんに加えてチェリストの大島純さんが加わり、東京では初のピアノトリオが演奏されました。

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シューベルトとブラームスのヴァイオリンソナタ、それにハイドンとメンデルスゾーンのピアノトリオと、ドイツ・オーストリアの大作曲家たちの名曲をたっぷりと素晴らしい演奏で聴かせてくれましたのでお客様も皆さん大満足されていました。

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メンデルスゾーン ピアノ三重奏曲第1番ニ短調op.49 名盤 ~メントリは1羽?~

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先日のルッツ・レスコヴィッツさん達のメンデルスゾーンのピアノ・トリオの名演奏の余韻がいまだに残っていて、手持ちのCDを改めて聴き直しています。

ところで、このピアノ三重奏曲第1番は演奏家の間では通称「メントリ」と呼ばれています。決してメンドリ(雌鶏)ではありません!

確かにこの曲はメンデルスゾーン円熟期の素晴らしい名作です。メンデルスゾーンには晩年に書かれたピアノ・トリオの第2番が有るのですが、「メントリ」と言えば第1番ということになっています。随分と不公平な扱いですが、大変美しく分り易いメロディが次から次へと出てくる第1番に人気が集中するのは容易に理解出来ます。ブラームスの書いたあの3曲のピアノ・トリオの含蓄の深さには及びませんが、このジャンルを代表する傑作の一つであることは間違いありません。

この曲は4楽章で構成されています。

第1楽章 アレグロ・モルト・アジタート 3/4拍子 チェロによりほの暗く美しい旋律が感情豊かに奏されて開始されます。旋律はヴァイオリンが引き継いで、そこにピアノが見事に絡み合い情熱的に進みます。その後いかにもメンデルスゾーンらしい甘く美しい曲想に変化して飽きさせません。終結部も壮大に盛り上がり、この曲の要である楽章です。

第2楽章 アンダンテ・コン・モート・トランクィロ 4/4拍子 第1楽章から一転して静けさと幸福感に覆われた極めて美しい音楽に変わります。正に「無言歌」といった風情です。

第3楽章 スケルツォ 6/8拍子 急速なスケルツォは、「真夏の夜の夢」の妖精たちが飛び回る光景そのままです。

第4楽章 フィナーレ:アレグロ・アッサイ・アパショナート 4/4拍子 エキゾチックな旋律とリズムが大変印象的で一度聴いたら忘れられないことでしょう。主題を繰り返すうちに徐々に感興が高まってゆき、やがてそれが爆発して最後は情熱的に盛り上がります。

それでは所有CD盤をご紹介します。

51ejw4igywlティボー(Vn)、カザルス(Vc)、コルトー(Pf)(1927年録音/EMI盤) SP録音時代に一世を風靡したトリオの名演奏です。自分は写真の海外盤のセットで聴いていますが、1枚物でも出ています。なにせに90年前の録音ですので音は貧弱です。しかしこの演奏から一杯に湧き上がる濃厚なロマンの香りは如何ばかりでしょう!こんな演奏が聴けていた時代が有ったのです。時代が変わり、生きている人間も変わり、演奏スタイルも変わりました。演奏にミスが有るか無いか、そんなことが演奏の評価を左右することのない古き良き時代。聴衆にとってはどちらが幸せなのでしょう。そんなことを改めて考えさせられる演奏です。一度はお聴きになられて欲しいです。

51uoqbiaoelシュナイダー(Vn)、カザルス(Vc)、ホルショフスキー(Pf)(1961年録音/CBSソニー盤) カザルスがホワイトハウスに招かれて演奏会を行いました。ケネディ大統領の御前演奏です。この日はアンコールで「鳥の歌」も演奏されました。共演したシュナイダーはブダペスト四重奏団の第2ヴァイオリン奏者ですが、大変な実力者にしてカザルスの盟友です。演奏はその気宇の大きさに圧倒されます。激しく気迫に溢れていてメンデルスゾーンの美感は確かに損なわれていますが、そんなことよりももっと大切な「真の音楽とは何か」ということを教えられるようです。モノラル録音で音質はクリアというわけには行きませんが、「歴史的」という名に恥じない物凄い演奏です。

61jxmpplyflスーク(Vn)、フッフロ(Vc)、パネンカ(Pf)(1966年録音/スプラフォン盤) スークのヴァイオリンは爽やかで清潔感に溢れますが、特に若い時代には音の線が細くすっきりとし過ぎているきらいが有りました。フッフロとパネンカも同質の傾向ですので、それが古典派やボヘミア物だと大いに魅力となりますが、ロマン派の音楽には幾らか物足り無さを感じてしまいます。このメンデルスゾーンも端正で誠実な演奏で好感が持てますが、もう少し艶や色気が欲しいところです。そうなると後述のスターン達の演奏が自分にとっては理想形に近いです。

510p5wluyel__sx425_スターン(Vn)、ローズ(Vc)、イストミン(Pf)(1966年録音/CBSソニー盤) スターンが大ヴァイオリニストの割には意外に華やかさに欠けるトリオでしたが、演奏は実に素晴らしいです。古典的な様式感、造形性を保っているので、派手さは受けませんが、スターンの精緻かつ音楽的な演奏とやはり実力者の二人とが相まって、非常にバランスの良い名演奏を繰り広げています。ある程度たっぷりとしたロマンティシズムも感じさせますので、スーク達のように物足り無さを感じさせることも有りません。もっともオーソドックスな名盤だと言えます。

91w8sr5qphl__sl1500_キョンファ(Vn)、トルトゥリエ(Vc)、プレヴィン(Pf)(1978年録音/EMI盤) 全盛期のキョンファのヴァイオリンが凄いです。一音一音に凄まじい切れと気迫が漲っていて圧巻です。音色は暗く甘さが無いので、通常のメンデルスゾーンのイメージとは少々異なります。その分トルトゥリエはいかにも大家らしくたっぷりとチェロを歌わせて全体が一本調子に陥るのを防いでいます。プレヴィンのピアノも健闘しています。非常に聴き応えの有る名演奏に違いありませんので是非お薦めしたいです。また、カップリングされたシューマンのトリオ第1番では音楽との距離はより密接にあると思います。

ということでマイ・フェイヴァリットはカザルス達のホワイトハウス・ライヴ盤、リファレンスにしたいスターン盤、個性的なキョンファ盤で、これらはことあるごとに聴きたくなります。

なお、ここには挙げていませんがムターがハレル、プレヴィンと共演したグラモフォン録音盤も3、4楽章など必要以上の快速なのでどうかとは思いますが、面白さは抜群です。

マーラー 交響曲第5番 テンシュテット/北ドイツ放送響の1980年ライヴ盤

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Ph13058クラウス・テンシュテット指揮北ドイツ放送響(1980年録音/Profil盤)

マーラー演奏を得意とする古今の指揮者は何人も挙げられますが、それでも突き詰めればレナード・バーンスタインとクラウス・テンシュテットが双璧だと思っています。

もっともバーンスタインがニューヨーク・フィル、ウイーン・フィル、コンセルトへボウといった超一流のオーケストラとの共演が多かったのに対し、テンシュテットの演奏はランクが一段下のロンドン・フィルがメインでした。というのもテンシュテットはリハーサルの際に、まるでアマチュアオケのように厳しく練習を行うことから、伝統のあるドイツ・オーストリアの楽団とは折り合いが悪かったからです。

その点、ロンドン・フィルは献身的に練習をこなし、団員は「彼の為なら我々は120%の演奏を行う」と言っていました。事実、彼らは毎回死に物狂いの熱演をしましたし、ライヴ録音からはそれが確かに感じ取れます。

しかしどんなに献身的に熱演をしたとしても、やはり超一流の音は出せないのです。それが証拠に「折り合いが悪かった」という北ドイツ放送響やウイーン・フィルとの数少ないライヴ録音の圧倒的な名演にはどうしても及ばないからです。

テンシュテットの最高のマーラー演奏の記録は恐らく北ドイツ放送響との第2番「復活」だと思います。これはテンシュテットのマニアなら誰でも知っている海賊レーベルFirst Classicsから出ていたもので、あのバーンスタインの「復活」をも凌ぐであろう唯一の演奏です。

テンシュテットが北ドイツ放送響の音楽監督だったのは1979年から1981年のわずか3年であり、しかも録音が非常に乏しいのが現実ですので、海賊盤ながら極めて優秀な音質で聴くことが出来るこの録音には計り知れない価値が有ります。

マーラーには同じFirst Classics盤に第1番が有り、これもまた非常に素晴らしい演奏ですので、どうしてこのオケともっと多くの録音を残してくれなかったのか悔やまれてなりません。

そんな中で、1980年録音の北ドイツ放送響との「第5番」のライヴ録音が一昨年にProfilレーベルからリリースされました。ご紹介がすっかり遅くなりましたが、これを紹介しないわけには行きません。

テンシュテットが特に得意として何度も指揮していた第5番には、まず主兵のロンドン・フィルとは1978年のセッション録音(EMI盤)、1984年の大阪ライヴ(TDK盤)、1988年のライヴ録音(EMI盤)が有ります。特にライヴ録音は壮絶な演奏で絶対に聴いておかなければなりません。

また、コンセルトへボウ管に1990年に客演した際のライブ盤は、ロンドン・フィルとのライヴほどの壮絶さは無いもののオケの優秀さから、個人的にはこれまで最も好んできた演奏です。

そこで、この北ドイツ放送響と1980年にハンブルクで行われたライヴ盤を実際に聴いてみましたが、第1楽章からテンシュテット得意の大見得を切った迫力が凄いです。巨大で濃厚な表現は後年の演奏と比べて全く遜色なく、この時期で既に曲の解釈、表現が完成されていたことがよく理解できます。北ドイツ放送響の音は色彩や艶やかさにはやや乏しく、かなり暗めの音色なのですが、腹に響く底力の有る音が凄く、これだけ充実して聴き応えの有る音は中々有りません。何度も何度も厳しい練習を繰り返して仕上げられたであろう演奏の完成度は驚異的です。それは単にミスが有る無しという次元の話ではありません。

バーンスタインやカラヤンはディナーミクの変化を極端に大きく取るので、弱音部では旋律線が弱くなる傾向が有ります。それに対してテンシュテットは決して旋律が消え入るほどには弱くしません。従って北ドイツ放送響の弦楽セクションにはウイーン・フィルのような色気は有りませんが、頻繁に現れる情緒的で歌謡調のメロディを存分に味わうことが出来ます。

この演奏で、もしも僅かでも物足りなさを感じるとすれば、第4楽章アダージェットでしょうか。あの深い闇の中や空間に消え去ってしまいそうな感覚というのをこれ以上に強く感じさせる演奏は他にも存在するからです。

この演奏はライヴ録音ながら完成度が極めて高いのですが、第4楽章で第1ヴァイオリンの中にハイポジションの音を外している人が居たり、更にどうしたことか終楽章のイントロでホルンが音をコケています。中にはこの部分を挙げてこの演奏を否定する方が居るかもしれませんが、それでは余りに勿体無いです。実演では疵は付きものですし、全体の圧倒的な感銘の前には些細な問題だと私は考えます。いずれにしても最も好むマーラーの第5番の録音が登場しました。

なお、このディスクは2枚組で同じ1980年のライブの「亡き子をしのぶ歌」が収録されています。ビルギット・ファスベンダーが独唱を務めていて、こちらももちろん素晴らしい演奏です。

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ピアノトリオ・コンサートへのお誘い ~洗練された室内楽の風に乗せて~

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       (クリックしてください。拡大します。)
ヴァイオリニストの國本樹里さん、ピアニストの福田美成子さんのお二人は共にフランスのパリへ留学して数年前に帰国した若き音楽家です。ご縁が有ってご帰国以来応援をさせて頂いています。

國本さんは現在在京オケのエキストラなどを務めながら多方面で活躍中。福田さんはラジオ出演や新聞の音楽コラムを手掛けながら室内楽・ソロで活躍中です。

そのお二人が札幌交響楽団のチェリストを7年間務めた長瀬菜々子さんとトリオを組んで6月に演奏会~洗練された室内楽の風に乗せて~を開きます。

会場は群馬県高崎市のカフェサロン小径(こみち)です。高崎はピアノの福田さんの出身地であることから、きっとアットホームなサロンコンサートになることと思われます。

ご都合が付きましたら優れた音楽家三人によるピアノトリオ演奏をどうぞお聴きになられてください。

開催日時:2017年6月4日(日)14:00開演 

会場:カフェサロン小径(こみち) 群馬県高崎市高関町306-4(JR高崎駅より車5分、徒歩15-20分) 

料金:2,500円(全席自由)

ご予約・お問い合わせ
カフェ小径  027-330-5512
サロン代表 080-4926-3111

山田和樹指揮日本フィル演奏会 マーラー交響曲第7番

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昨日は渋谷のオーチャードホールへ山田和樹と日本フィルのマーラーを聴きに行きました。同コンビで進行中のマーラー・チクルスですが、昨年聴いた第6番が素晴らしかったので第7番から第9番のチケットを通しで購入しました。今回はその第7番の演奏会です。

全般的に速めのテンポで非常に若々しい演奏でしたので、この曲がどちらかいうと第2番から第4番のいわゆる”角笛”シリーズに続くような印象を受けました。それはそれで悪くは無いのですが、個人的にはこの後期の曲には更に爛熟したロマンの味わいが欲しいかなぁなどと思いました。

さて、続く第8番、第9番はどんな演奏になるのか楽しみです。

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マーラー 交響曲第7番「夜の歌」 名盤

ブラームスのヴァイオリン協奏曲 新たに聴いたCDあれこれ

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  • このところブラームスのヴァイオリン協奏曲をしばらく集中して聴いていました。
  • 今まで聴いていなかった演奏の中にも興味深いものは多いですし、齢を取ったせいか段々と色々な演奏に対するストライクゾーンが広くなった気がします。それ自体は良いことではあるのでしょうが、聴いてみたくなるCDが増えてしまうという弊害??が起こります。
  • ですので実はストライクゾーンを厳しくしたいという衝動にも駆られてジレンマに陥っているところです。
  • まぁ、それはそれとして最近聴いたCDを旧記事に加筆しましたので宜しければご覧ください。
  • ①パールマン、ジュリーニ/シカゴ響盤
    ②アッカルド、マズア/ゲヴァントハウス盤
    ③レーピン、シャイー/ゲヴァントハウス盤
    以上、ブラームス ヴァイオリン協奏曲 続々・名盤~男祭り~ 

    ④チョン・キョンファ、ラトル/ウイーンフィル盤
    以上、ブラームス ヴァイオリン協奏曲 続・名盤~女神達の饗宴~ 

    N響メンバーによるベートーヴェン弦楽四重奏曲 全曲演奏会 第1回

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    N響メンバーのカルテット”コスモス弦楽四重奏団”によるベートーヴェン弦楽四重奏曲の全曲チクルスがスタートしました。半年ごとに行われて3年で完結予定です。21日はその第1回目でしたので会場の渋谷ラトリエに行ってきました。

    第1番から4番までの4曲が演奏されましたが、いくら初期とは言ってもやはりベートーヴェン。聴きごたえのあるプログラムでした。滅多に生演奏で聴く機会が無いので良かったです。

    演奏も非常に素晴らしかったです。さすがはN響の同じメンバーで何年も前からカルテットの活動をされているだけあり、アンサンブルの呼吸はぴったりですし、音楽の表情、ダイナミクスなどが練り上げられていたのに感動です。第1ヴァイオリンはN響のコンマスを長年務めて現在は退団されている山口裕之さんですが、緊張感を持った間合い、音の出を合わせる際の絶妙な指示と息遣いなど正に熟達の技でした。弦楽四重奏の魅力を心行くまで楽しませて貰えました。

    次回の第2回は11/11ですが、第5番、第6番、それにラズモフスキー1番が演奏される予定です。詳しくは追ってご紹介したいと思います。

    来年5月予定の第3回にはラズモフスキー2、3番、ハープ、セリオーソの4曲を1回で演奏するそうですがこれは凄いですね!

    第2ヴァイオリンの宇根さんは私の地元厚木にお住まいの方ですし、ヴィオラの飛澤さんとお二人とに終演後にお話しが出来たのは楽しかったです。


    カルテット・ヒムヌス コンサート2017のご紹介

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    結成から7年目。カルテット・ヒムヌス(Quartett Hymnus)のコンサート2017です!

    ☆メンバー
    小林朋子(第1ヴァイオリン)ベルリン国立歌劇場アカデミー出身
    山本翔平(第2ヴァイオリン)東京都交響楽団員
    松井直之(ヴィオラ)NHK交響楽団員
    高木慶太(チェロ)読売日本交響楽団員

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    開催:2017年6月8日(木)19時開演
    場所:銀座王子ホール

    ☆曲目
    ハイドン 弦楽四重奏曲 作品20-1 変ホ長調
    ヤナーチェク 弦楽四重奏曲 第1番 クロイツェル•ソナタ
    ベートーヴェン 弦楽四重奏曲 第12番 作品127 変ホ長調

    ドイツで研鑽した小林朋子はカルテット・エクセルシオの第1ヴァイオリンの代演奏者にも抜擢された実力派。
    他の三人も在京オーケストラに在籍する若き腕利き団員揃いです。
    素晴らしいプログラムですので是非!

    チケットは
    前売り券3500円
    当日券4000円
    (全自由席)

    チケットのお求めは、下記へどうぞ
    『クァルテット ヒムヌス 』
    メール:qhymnus@gmail.com
    電話:090-6136-5329

    『王子ホールチケットセンター』
    Web: www.ojihall.jp
    電話: 03-3567-9990

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    大澤明子 フルートコンサート at KAWAIサロン横浜 ~一音の奇跡~

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    先週日曜日のことですが、横浜にあるKAWAIサロンへフルート奏者の大澤明子さんのコンサートを聴きに行きました。ピアノ伴奏を務めたのはお友達の渡辺ら夢さんです。

    バッハとシューベルトの名曲を中心に組まれたこの日のプログラム。大澤さんのフルートは音が美しく演奏も素晴らしかったです。

    7月にファーストベイビーの誕生を予定している渡辺ら夢さんも大きなお腹で頑張っていました。さすが母は強い!(??)

    この日は日差しが強く汗ばむようなお天気でしたが、爽やかなお二人の演奏にすっかり心地良い気分になりました。これこそが「一音の奇跡」ですね。

    大澤明子さんのブログにこの日の記事と写真が紹介されていますのでご覧になられてください!リンクはこちら フルート奏者大澤明子の「一音の奇跡」

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    演奏する大澤明子さん(右)と渡辺ら夢さん(左)

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    リナルド・アレッサンドリーニ/コンチェルト・イタリアーノ来日公演 「ヴェスプロ(聖母マリアの夕べの祈り)」

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    今日は来日中のリナルド・アレッサンドリーニ率いるコンチェルト・イタリアーノの「ヴェスプロ(聖母マリアの夕べの祈り)」を聴きに神奈川県立音楽堂へ行きました。

    Naiveレーベルから出ている彼らのCDは愛聴盤なのですが、まさか彼らを実演で聴くことが出来るとは思いませんでした。

    しかも県立音楽堂は木造りの内壁の響きが自然でキャパシティがそれほど多くないのが古楽にはうってつけです。

    指揮者のアレッサンドリーニはかつてバロック・ヴァァイオリンの名手ビオンディのグループでチェンバロを弾いていましたが、1984年に自らの古楽団体コンチェルト・イタリアーノを立ち上げました。声楽陣は全員イタリア人で発音の美しさを重視していることで知られます。

    さて演奏が始まると、あのCDで馴染んだ音が生々しく耳に飛び込んできました。もちろんセッション録音されたCDに比べれば各パートの分離やピッチの上で完成度が幾らか劣るのは止むをえません。しかしそんなことはどんな演奏家においても言えることですし、とにかくあの本物の響きで聴く「ヴェスプロ」は驚きでした。

    イタリア人の演奏するモンテヴェルディがドイツやイギリスの団体の演奏するそれと雰囲気が異なるのは以前から感じていましたが、こうして実演で聴くと改めて深く感じられます。例えばCDならドイツの聖歌隊の歌で聴けば、宗教音楽としての峻厳さはずっと増します。その点、コンチェルト・イタリアーノの演奏はもっと純粋な音楽としての愉悦に満ち溢れています。それはどちらが優れているという問題では無く、それぞれの特徴を楽しめば良いのです。

    よく言われるように「ヴェスプロ」はバッハの三大宗教曲と並ぶ大傑作ですし、それをこのような本格的な演奏で聴ける機会はそう多くないので貴重な体験でした。

    ホールは一番後方の座席を除き超満席でしたが、演奏が終わった後にお客さんは総立ちとなり彼らに盛大な拍手を送りました。これにはアレッサンドリーニさんも団員たちもみな非常に驚いているようでした。

    この公演にはお客さんが大勢集まるだろうなとは予想していましたが、モンテヴェルディの音楽と演奏の素晴らしさを理解する聴衆がこれほどまでに多かったとは本当に驚きです。

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    山田和樹/日本フィル 交響曲第8番「千人の交響曲」

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    今日は山田和樹/日本フィルのマーラー・ツィクルスの交響曲第8番「千人の交響曲」を聴きにオーチャードホールへ行きました。
    同じ声楽入りの曲とは言っても昨日のモンテヴェルディとは趣がだいぶ異なります。
    マーラー曰く「これまで自分の書いてきた交響曲第7番まではこの作品に比べれば序章に過ぎない」。
    確かに音楽史上最大のスケールの作品だと言えます。
     
    この曲を実演で聴くのは2度目で、前回は小林研一郎の指揮で同じ日本フィルでした。その時も凄いと思いましたが、今回のステージでは合唱がざっくり500人近く、それに100人を超えるオーケストラですから合わせて600人近くの人数です。前回聞いた時よりも明らかにスケールで上回ります。
     合唱が力強く歌うとオケが聞こえなくなるぐらいの迫力で背筋がゾクゾクしました。
    とてつもない音楽でありとてつもない演奏。これほどに”音楽による宇宙の鳴動”とか、そんな言葉が頭をよぎる経験は初めてかもしれません。
     
    次回はツィクルスの最終回、交響曲第9番です。おそらく自分が最も好きなシンフォニー。楽しみは続きます。

    カルテット・ヒムヌス(Quartett Hymnus) コンサート2017

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    8日のことになりますが、カルテット・ヒムヌス(Quartett Hymnus) のコンサートへ行きました。会場は王子ホールです。

    ”ヒムヌス”というのはラテン語で”響き”とか”賛歌”という意味を持っていて、演奏に常により良い響きを目指すことからこの名が付けられたようです。

    全員がまだ30代の若手演奏家ですが、第1ヴァイオリンの小林さん以外の3人は在京オーケストラに所属しています。

    小林朋子(第1ヴァイオリン)ベルリン国立歌劇場アカデミー出身
    山本翔平(第2ヴァイオリン)東京都交響楽団員
    松井直之(ヴィオラ)NHK交響楽団員
    高木慶太(チェロ)読売日本交響楽団員

    この日の演奏曲目は、前半がハイドンの第31番、ヤナーチェクの「クロイツェルソナタ」、後半がベートーヴェンの第12番でした。弦楽四重奏の醍醐味を味わえる好プログラムです。

    彼らはオーケストラ団員が大半を占めていて多忙な為に定期演奏は年に一回だけ。それ以外に行う演奏会も回数は決して多く有りません。

    しかしカルテットの活動は既に7年も続いていて、演奏会に向けてはかなりの時間を費やして入念にリハーサルを行うと聞いています。

    今日の演奏もアンサンブルが優れているだけでなく、4つの楽器のフレージング、バランス、音色などが非常に良く練り上げられていると感じました。

    そのうえで、各楽曲へ真摯に迫ろうとする意欲が漲っていてすこぶる感動的でした。特にヤナーチェクでの全員の凄い気迫には圧倒されました。

    弦楽四重奏というのは一般的にはマニア好みのジャンルで、演奏会の数も決して多く有りませんが、近年は若手の演奏家の取り組みが増えつつあるように感じます。

    この日も会場はほぼ満席でした。このような優れた演奏会をもっともっと聴きたいものだと思います。

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    以上の写真撮影&提供は中村義政さんからです。

    シューベルト 「アルペジオーネ・ソナタ」 名盤 ~三種の神器~

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    「アルペジオーネ・ソナタ」イ短調D821は、いかにもシューベルトらしい美しく抒情的なメロディで人気の高い曲です。

    もともとこの曲はアルペジオーネ(もしくはアルペジョーネ)という楽器のために作曲されたのでこのタイトルが付いていますが、それは一体どのような楽器かというとこんな外見をしています。

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    アルペジオーネは19世紀前半にウイーンのギター職人シュタウファーによって発明されました。チェロをやや小さくしたような形をしていて、同じように足の間に楽器を立てて弦を弓で弾きます。一番似ているのはバロックのヴィオラ・ダ・ガンバです。

    大きな特徴は6弦でチューニングがギターと同じこと、またフレットがあることから「ギター・チェロ」とも呼ばれていましたした。けれどもこの楽器は世に広く普及することは無く、じきに忘れられた存在になりました。

    アルペジオーネのために書かれた曲の楽譜は余り残されておらず、せいぜいシューベルトのこの作品ぐらいです。

    この楽器が一体どのような音がしたのか実際に聴いてみたくなりますが、なにしろ復元楽器も演奏者も限られています。

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    クラウス・シュトルク(Ar)、アルフォンス・コンタルスキー(Pf)(1974年録音/アルヒーフ盤)
    ディスクは非常に限られますが、とりあえず復元されたアルペジオーネでの演奏を聴くことが出来ます。音と演奏は現在我々が良く耳にするチェロのものとは驚くほど異なります。しいて言えばやはりヴィオラ・ダ・ガンバに近い音です。シュトルクは極めてゆっくりと演奏しているので、全体はまったりとして素朴な音がますます素朴に感じられます。悪く言えば間延びした印象です。確かに一度は聴いてみる価値が有ると思いますが、これを果たして繰り返して聴きたくなるかと言えば正直疑問です。しかしもちろんそれは聴き手の問題ですので、実際にご自分の耳で試されて頂きたいです。

    さて、次は一般的に演奏されることの多いチェロによる演奏です。ところが4弦しかないチェロでは高音域の音や音の跳躍が多くなるために実は演奏がとても難しくなります。

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    ダニール・シャフラン(Vc)、リディア・ぺチェルスカヤ(Pf)(1960年録音/RCA盤)
    シャフランは旧ソヴィエトからほとんど外へ出なかったために余り知られていませんが、母国ではロストロポーヴィチと実力と人気を二分した名手です。事実コンクールでも二度ロストロポーヴィチと二人で一位を分け合いました。この曲では珍しくRCAに録音された演奏がCD化されています。速いテンポでこの難曲を軽々と弾いていますが、高音部の音程は完璧、頻繁に切り替わるスタッカートとレガートも明確に弾き分けています。歌い回しは自在で、そこかしこに豊かなニュアンスが溢れているのは驚きです。時折大きなルバートも見せますが基本のテンポの流れは崩さずに颯爽と進むのでロマン派風な粘りが感じられません。不思議とシューベルトの古典性が感じられます。有り余るテクニックを駆使していても表面的には抒情性が浮かび上がるという凄い演奏です。ぺチェルスカヤのピアノも優れています。

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    ミシャ・マイスキー(Vc)、マルタ・アルゲリッチ(Pf)(1984年録音/フィリップス盤)
    チェロで弾くとこの曲はどうしても派手で技巧をこらしたようになり、オリジナルとはかけ離れた異形の音楽になりがちです。しかし叙情派のマイスキーが弾くと全くそんなことはありません。しっとりと落ち着いていてダイナミクスをことさら強調するような箇所がありません。全体にテンポが遅くゆったりとしているのでロマン派風に聞こえます。古典派とロマン派の境目に立つシューベルトでは無く、まるでシューマンのように叙情ロマン派とでも呼びたくなるような魅力に溢れます。アルゲリッチも奇をてららった表現が目立つようなことは無くオーソドックスに徹しています。しかし漂うロマンの香りは確かにアルゲリッチのそれです。テンポの変化は有りますが振幅の巾が大きいので違和感なく落ち着いて音楽に浸れます。

    現代の楽器でこの曲を演奏するとすれば、アルペジオーネの音色に近いのはチェロよりもむしろヴィオラでしょう。ところがヴィオラのソリストというのは少ないためにCDの数もチェロに比べてずっと少ないです。

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    ユーリ・バシュメット(Va)、ミハイル・ムンチャン(Pf)(1990年録音/RCA盤)
    ヴィオラとくればやはりバシュメットの演奏は本命です。この曲をヴィオラで弾くとチェロのように高音部が難所だらけということは無く、むしろアマチュアでも一応は弾ける曲となります。バシュメットのような名人にとってはこの曲は朝飯前の易しい曲でしょう。そこで表現力を駆使して面白く聴かせようということになります。基本テンポはゆったりとしていても、ルバートを多用しながら刻々と表情の変化を付けていきます。しかしそのために、オリジナルの音に近いはずの楽器の割には素朴さを感じさせない結果となっています。この表情の余りの豊かさは聴き手の好みにより評価が大きく左右されるところでしょう。ムンチャンのピアノは室内楽に経験豊富なベテランだけあり素晴らしいです。

    三種類の楽器それそれに特徴が有るので、CDは最低各一枚づつ欲しいところです。しかしどれか1種類だけ選べと言われた場合には自分ならマイスキー/アルゲリッチ盤を選ぶでしょう。

    もうひとつバロックチェロによる演奏も良さそうですが、お奨めの演奏が有れば知りたいですね。

    マーラー 交響曲「大地の歌」 続・名盤

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    若いころからマーラーの交響曲は大好きで、どの曲も愛してやまない作品ばかりですが、最近は「大地の歌」を良く聴いています。
    所有のCDは「大地の歌 名盤」でご紹介していましたが、最近気に入ったものが加わりましたので、久々に続編として書いてみたいと思います。

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    ヨーゼフ・クリップス指揮ウイーン交響楽団(1972年録音/オルフェオ盤)

    クリップスはウイーン出身ですが、第二次大戦でナチスに協力をしなかったことから祖国を追われて戦争終結までは相当の苦難が有ったそうです。しかし逆に戦後は楽壇に直ぐ復帰が認められて活躍しました。
    クリップスはハイドンやモーツァルト、べートーヴェンという印象が強く、マーラーは珍しい印象を与えます。このCDはウイーンでのライブ録音ですが、クリップスは「大地の歌」を好むようで、1964年ウイーン芸術週間における同じウイーン交響楽団とのライブ録音も有ります(グラモフォン盤)。

    さてこのオルフェオ盤を聴いてみて一遍で魅力に憑りつかれました。一言で『人間味に溢れるマーラー』です。第1曲冒頭のホルンは決して音が厚いわけでは無いのですが、何か人間的な声の叫びを聞くかのようです。特筆すべきは弦も管もその歌い回しが正に独特のウイーン節で、その上手さと魅力はウイーン・フィルと間違えるほどです。情緒的な味わいはむしろウイーン・フィル以上と言っても過言ではありません。これはやはりクリップスの手腕によるところが大きそうです。

    歌についてもテナーのジェス・トーマスが実に素晴らしいです。ワーグナー歌手として歌の迫力は随一ですが、情緒的な歌い上げ方にも大いに魅了されます。アルトのアンナ・レイノルズもフェリアーほどではなくても非常に情感の籠った深い歌を聞かせています。

    これはオーストリア放送協会によるステレオ録音ですが、各楽器が明瞭で分離が良く、微細のニュアンスまで良く聞き取れます。室内楽的な透明感が有りますが、音が薄く感じられるどころか逆に生々しい迫力を感じます。

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    ゲオルグ・ショルティ指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1992年録音/DECCA盤) 

    ショルティのマーラーは以前は余り食指が動かずにいましたが、最近はそうでも無くなり少しづつ聴いています。
    この演奏はショルティの「大地の歌」の二度目の録音ですが、手兵のシカゴ響ではなくコンセルトへボウ管と共演した際のライブです。

    なんと言っても音色の魅力でウイーン・フィルと魅力を二分する名門ですので、そのしっとりと落ち着いた音にショルティのリズム感と力強さが加わって素晴らしい演奏となっています。前述のクリップス/ウイーン響ほどの情緒表現の豊かさは望めないにしても、その他の演奏と比べてみても充分に味わい深さを持ちます。

    それにしてもコンセルトへボウ管の魅力は抜群です。「青春について」から「美について」「春に酔える者」かけてはショルティの長所が出ています。「美については」快速テンポがミュージカルのようですが興奮させられます。
    意外にも「告別」がゆったりと深々としていてとても味わいを感じます。ことさら暗く沈滞しているわけでは無いのですが、中間部の音の厚みは聴きごたえが有ります。

    ライブ録音にしては完成度の高さに驚きます。しいて言えばアルトのリポヴシェクに僅かに不安定さを感じないでもありませんがこれは些細なレベルで問題になりません。テノールのトーマス・モーザーは声が若々しく良いのですが特別に抜きんでた存在ではありません。このCDの魅力は歌手では無く、オーケストラ演奏に有ります。

    というように2枚ともマイ・フェイヴァリット盤の仲間入りを果たしましたが、特にクリップス盤は一気にワルター/ウイーン・フィル盤に続く高位置を占めました。


    山田和樹指揮日本フィル演奏会 マーラー交響曲第9番

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    山田和樹と日本フィルによるマーラーのシンフォニー・ツィクルスもいよいよ最終回となりました。いつものオーチャードホールへ聴きに行きました。

    ツィクルス全曲は聴くことが出来ませんでしたが、第6番以降の4曲を聴けたのは良かったです。出来ればあと2番「復活」、5番が聴けていればベストでした。

    もっとも「大地の歌」が今回のツィクルスには含まれませんでした。『全曲』と銘打つのに含まれないのは不思議なところですが、一般の”交響曲全集”には「大地の歌」が含まれないほうが多いので仕方ないところです。

    マーラーの第9番は恐らく自分が最も好きなシンフォニー。以前はブルックナーの第9番だったのですが、最近はむしろマーラーに惹かれます。

    ただ、これまでマーラーの9番を実演で聴いたのは小林研一郎/日フィルとパーヴォ・ヤルヴィ/フランクフルト放送響ぐらいです。

    あとは自分が大学を卒業した直後に複数の大学オケによるジョイントコンサートへヴィオラで参加したこともありました。

    さて、例によって武満作品が前プロに置かれましたが、曲は「弦楽のためのレクイエム」でした。前プロには正にピッタリです。

    マーラーの第9番には作曲者自身のそれほど遠くないうちに訪れるであろう”死の予感”が間違いなく反映されています。第1楽章が”死への恐れ”ならば、第2楽章、第3楽章は”生との格闘”、そしてついに第4楽章では”永遠の世界への旅立ち”というように聞き取れます。

    最後に”人間の生”全てが浄化されて終わるようなこの曲には、ちょっと他に類例が無いような強烈な魅力を感じます。

    今日の演奏もとても良い演奏でした。山田和樹の指揮は幾らか速めのテンポで推進力があり、弦楽器を目いっぱい弾かせてその上に管楽器と打楽器をバシッっと乗せます。そのバランス造りは終始徹底していました。ですので全体がとても引き締まっていて迫力に不足しません。音楽が実に分かりやすいです。

    ただ、それが余りにスッキリと見通しが良いので、マーラー特有のネチネチ、ドロドロとした雰囲気が少なく感じられるのは仕方ありません。そういうところは先輩のコバケンのほうが得意とするところです。

    そういった個人の好みは有るにせよ、オーケストラにとってマーラーのツィクルスほど面白いものは無いので、いずれまた何年か先に山田さんの指揮がどのように進化しているのか聴きいてみたいものだと思います。

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    マーラー 交響曲第9番 名盤

    マーラー 「大地の歌」 ~マーラーのピアノ版、シェーンベルク編曲による室内楽版~

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    マーラーの「大地の歌」は、全曲を通して歌曲的な要素が非常に高いことと交響曲番号が付けられていないことから交響曲に含めないのが主流のように見受けられます。

    しかし番号が付いていないのはマーラーが『交響曲第9番』に纏わる不吉なジンクスを嫌った為ですし、何よりも本人が「交響曲」だと言っているわけですから、それを全集から外すことには少なからず疑問を感じます。

    それはそれとして「大地の歌」には、マーラー自身が書いたピアノ伴奏版の楽譜が存在します。この楽譜がコンサートでの使用を前提としたものなのか、それとも単に交響曲を作曲するための草譜なのかは分かっていません。

    ともかく、ピアノ1台で伴奏される場合にはやはり歌曲として扱われるのが妥当だと思います。

    このオリジナルピアノ版の出版は、東京の国立音大が資金協力をして実現したことから、世界初演はこの大学のホールで1988年にヴォルフガング・サヴァリッシュのピアノ演奏により行われました。

    現在ではCDも幾つか出ていますが、私が所有しているのは世界初演の翌年にリリースされて、いまだに評価の高いカツァリスがピアノを弾いた演奏です。

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    トーマス・モーザー(テノール)、ビルギッテ・ファスベンダー(メゾソプラノ)、シプリアン・カツァリス(ピアノ)(1989年録音/TELDEC盤)

    このCDに関しては、とにもかくにもカツァリスのピアノの上手さに尽きます。演奏が時に説明口調となり煩わしさを感じるという欠点の有るカツァリスですが、マーラーのこの曲ではそれが全て長所となっています。

    カツァリスは高い技巧を持ち、オーケストラの演奏に引けを取らないほどの幅広い表現力があり、どの曲でも聴いていて非常に面白く、惹き込まれてしまいます。

    当たり前ですが、ピアノのみの伴奏で聴くとこの曲が完全に歌曲のように聞こえます。

    歌手の二人については、モーザーはとても素晴らしいです。ファスベンダーはジュリーニ盤などでこの曲を歌っていますが、この演奏ではあっさりと淡白に歌っていてやや物足りないです。しかし総合的に、ピアノ版でこれ以上の演奏を見つけるのは現在も、今後将来も中々に難しいと思います。

    一方、この曲にはシェーンベルクが室内楽版に編曲した楽譜も存在します。

    シェーンベルクが自ら立ち上げた“私的演奏協会”では当時の新しい音楽を人々に紹介するために演奏会を毎週開催して、様々な作品を紹介しました。

    その演奏会では費用上の問題から、管弦楽作品を室内楽に編曲をして演奏が行われましたが、この「大地の歌」もマーラーを敬愛していたシェーンベルクが室内楽編成に編曲したものです。

    CDは幾つも出ていて有名どころではフィリップ・ヘレヴェッへやオスモ・ヴァンスカなどのディスクも有りますが、私の愛聴しているのは新盤で入手性も良い下記のものです。

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    チャールズ・レイド(テノール)、スーザン・プラッツ(メゾソプラノ)、ジョアン・ファレッタ指揮アタッカ四重奏団、ヴァージニア・アーツ・フェスティヴァル・チェンバー・プレイヤーズ(2015年録音/NAXOS盤)

    ナクソスレーベルには中々侮れないディスクが多々存在していますが、これもその一つです。余り耳にしない演奏家名ですが、指揮者は女流のジョアン・ファレッタですが、幾つものコンクールで優勝している実力者です。そしてアンサンブルの中心となるのは米国の新進カルテットのアタッカ四重奏団です。こちらもご存知の方は多くないでしょうが、2011年の大阪室内楽コンクールで優勝を飾り、その後も来日して演奏を行っています。このカルテットの第ニヴァイオリンを担当しているのは日本人の徳永慶子さんです。このカルテットに管楽器、コントラバス、ピアノが加わり演奏されています。

    この編曲版を耳にして最初は戸惑うかも知れません。しかし聴き進むうちに直ぐに面白さの虜になると思います。普段聴いている分厚い管弦楽の響きとはうって変って非常に透明感あふれる繊細な音が繰り広げられるからです。もっとも個人的にはこの編成の場合にはピアノの音がやや異質に感じられます。むしろピアノを外した方が良いのではと思います。これが始めからピアノ版であれば当然気にならないのですが。

    歌い手のチャールズ・レイドもスーザン・プラッツもアメリカ人ですが、二人ともマーラーを良く研究しているようでとても共感に満ちた歌を聴かせています。

    ピアノ版だとこの曲が歌曲に聞こえますが、室内楽版だと歌曲と交響曲の中間のイメージとなるのがとても面白いところです。

    『どちらが』ということではなく、マーラーが、大地の歌が、お好きな方には是非どちらも聴かれて欲しいと思います。

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    交響曲「大地の歌」 名盤

    佐倉フィルハーモニー第66回定期演奏会 伊藤悠貴指揮、山田磨依ピアノ独奏

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    記事のアップがだいぶ遅れてしまいましたが、先月6月18日に千葉県佐倉市の市民オーケストラ、佐倉フィルハーモニーの演奏会を聴きに行きました。定期公演を今回で第66回を数える歴史のある団体です。

    何故はるばる千葉までアマチュアオーケストラを聴きに出かけたかと言えば、指揮者が
    若手チェリストで抜群の実力を誇る伊藤悠貴さんだったからです。

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    チェロの弓を指揮棒に持ち替えて(と言っても彼は指揮棒を用いません)、ロッシーニ「セヴィリアの理髪師序曲」、ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」、チャイコフスキー「交響曲第4番」という非常に聴き応えの有るプログラムを演奏しました。

    ラフマニノフのピアノ独奏は、まだフランス留学中から私も親交のある若手の山田磨依さんです。彼女が最も得意とするフランス物とは異なるロシアの曲をどんな風に演奏するのかも興味深々でした。

    さて実際に演奏が始まると、「序曲」から一気に熱気に包まれました。伊籐悠貴さんの指揮は非常に大胆でドラマティック。音楽が光輝いています。
    実は伊籐さんは、もう一つの活動拠点である英国でこれまで何度も指揮をして来ました。チェロであれほどの才能を示しますが、20代の若さで指揮にも素晴らしさを発揮して、その可能性は無尽蔵です。
    しかし、普段チェロの演奏では奇をてらったところは無く、常に正攻法で王道を行くような演奏をしますが、指揮では大胆さが大きく顔を出します。このちょっとしたイメージの違いはとても面白いです。案外と指揮をするときの方が奥底に潜んでいるものが表面にそのまま浮かび上がるのかもしれませんね。
    そういう意味でもメインのチャイコフスキーは圧巻でした。とくに第1楽章、第4楽章のフィナーレでの追い込みが凄まじく、興奮の極みでした。
    パーカッションをプロを中心とした腕利きの布陣で固めたことも大きかったです。
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    山田さんのラフマニノフも
    彼女の持つ美しい音色で詩情一杯に弾きこなされました。新しい発見に驚きです。決して”借り物”ではない「磨依さんのラフマニノフ」がしっかりと聴けたことが大きな喜びでした。
     
    聞けば伊藤さんは佐倉フィルとの再演の話が、もう既に出ているそうです。これは楽しみですね。次はどんなプログラムになるのでしょうか。

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    歌劇「マノンレスコー」 オベール/マスネ/プッチーニ 東京室内歌劇場公演のお知らせ

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    歌劇「マノンレスコー」の大変ユニークな公演が有ります。
    東京室内歌劇場が来週7月11日(火)18:45に渋谷の伝承ホールにて開催します。

    アベ・プレヴォ―の原作「騎士デ・グリューとマノン・レスコ―の物語」を題材としたオペラをプッチーニ、オベール、マスネの三人の作曲家が書いていますが、今回はストーリーに沿ったうえで3つのオペラから其々の歌を抜き出して再構成した内容となっているのです。

    指揮は大島義彰さん、そしてこの企画・構成・制作を行ったのは知り合いの原好香さんですが、果たしてどのような内容になるのかとても楽しみにしています。 

    ご興味の有る方は是非ご一緒しましょう。
    チケットのご予約は私を通してでも受け賜われますので、メールにてご連絡ください。
    メールアドレスrsa54219@nifty.com

    伊藤悠貴 チェロ・リサイタルのお知らせ

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    現在最も勢いのある若手実力派チェリスト伊藤悠貴さんのチェロ・リサイタルが7月15日(土)大田区アプリコ小ホールで開催されます。
    3月のみなとみらいリサイタルで伊藤さんとの素晴らしいDUOを聴かせたピアニスト入江一雄さんとの共演第2弾です。
    お近くの方も遠くの方も是非この素晴らしいリサイタルをご一緒に聴きに行きませんか!
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